漫画に思う離婚の闇

 yahooのトップページにも記事が掲載されましたので、目にした方も多いかもしれませんが、世の中には「妊娠中の妻の体と夫の体が入れ替わる設定の漫画」というものがあるようです。読んでみるとどうやらドタバタ系のラブコメではなく、「妊娠の辛さを思い知れ!」という内容のものです。特に案件とかではないので、リンクだけ貼っておきますのでご興味のある方は読んでみてください。

『朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート』キービジュアル(画像:講談社)(マグミクス)

朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート - Palcy (パルシィ) - 講談社とピクシブ発の少女マンガ、女性マンガアプリ
「あなたと子育てなんて絶対ムリ」と、突然嫁に離婚を突きつけられた俺、三浦優一。次に目覚めると、なんと妊娠中の嫁の中身が俺に!? 『妊娠は病気じゃない』『俺の飯は?』『母性足りないんじゃない?』次々と突きつけられる「俺」からの言葉に、いかに自分が無神経だったかを思い知る俺…。果たして俺は、こんな「俺」と出産までたどり着け...

 さて、筆者は離婚だけでなく、結婚生活に関わる本やメディアにはなるべく目を通すようにしていますが、「モラハラ夫が最後に大変な目に遭う」という展開は比較的ありがちで、女性の読者を中心に好まれる傾向にあるようです。妊娠中の妻に心無い態度を取る夫が、体が入れ替わることでそのことに気付くというこの漫画も、御多分にもれず、女性側が「それ見たことか!」とドヤ顔で溜飲を下げる様子が目に浮かびますね。

 さて、それ自体の発想はもっともですし、この漫画の主人公である夫の妻に対する態度もひどいものです。最近ではタレントの小倉優子さんが妊娠中に不倫されたことが話題になりましたので、妊娠中の夫の行動に対する風当たりは強くなる一方だと理解した方がよさそうです。

 また、妊娠に限らず、男性は女性の体の変化に対して理解が無さすぎます。「月経前症候群(PMS)」という言葉はご存知でしょうか。この言葉を知らないだけでモラハラ夫認定されてしまう、という記事さえ見たことがあります。このサイトを見ている方は離婚を考えている方や離婚調停中という方が多いかと思いますが、離婚の調停にも、その時代の世論や風潮というのは反映されることがあります。とにかく男性側はそのような世論が一部で形成されつつあるという流れは知っていた方が良いかと思います。

 しかし、タイトルにある「離婚の闇」ですが、男性による女性の体に対する無理解を指しているわけではありません。筆者がもっと「闇」と感じたことは、以下のような漫画の読者の意見です。

 「パパになる前に読むって法律出来ないかしら。必ず読ませたいです。」

 「これは教科書にするべきでは?」

 さて、これらの意見を読んで、みなさんはどのように感じられるでしょうか。もちろん、漫画の主人公の態度や妊娠中に不倫が論外であることは言うまでもありませんが、このような意見を持つ方々の「共感欲求」とでも言うべき感情も困りものです。もし自分が次のようなことを言われたらどうするのでしょうか。

①会社で上司のパワハラに苦しむ夫の一言

「俺もパワハラ会社で苦しんでいるんだから、お前もそういう会社に勤めろ!」

②インドのアウトカーストの女性の一言

「私トイレ掃除以外の仕事の選択肢がない。だからあなたも素手でトイレ掃除をしてみなさい。」

 2つほど例を出させていただきましたが、②はともかく①は男性からしても嫌悪感しか感じませんね。さて、ここで考えていただきたい点は以下の2つです。

①そもそも「共感」は可能なのか

 みなさんは自分と全く違う状況におかれている人に対して、どこまで心から共感することができるでしょうか。人に共感を求めるのであれば、自分も共感をする必要があります。あなたは世界中にいる大変な目に遭っている人達に対して、日頃どのような態度を取り、どのような感情を持っているのでしょうか。

②望んでいるのは「共感」か「解決(行動)」か

 うわべでなく心から共感することが難しいとして、あなたが望んでいるのは形ばかりの共感なのでしょうか。男性から「妊娠ってつらいよね。ぼくも漫画を読んだから分かるよ。」などと言ってもらいたいのでしょうか。それで満足ならそれで良いかと思います。ただ、望んでいるのが「家事をしてもらう。」などの行動なのであれば、「あなたも思い知れ!」という発想で物事が解決するでしょうか。

 

 重ねて書きますが、モラハラ発言や妊娠中のゲス不倫が問題外であることは言うまでもありません。しかし、「自分の苦しみを相手にも味わわせたい!」的な発想は非常に危険である、ということを我々は考えなければいけません。世の中の苦しんでいる人がみな、「他人にも苦しんでほしい。」と思っているわけではありませんよね。

 例に挙げたアウトカーストの女性は私も実際に会ったことがありますが、彼女に望みを聞いたら「自分の子供には自由に職業を選択できる世の中で生きてほしい。」と話していました。「私も苦しいんだからみんな苦しめばいいんだ。」「共感したフリだけしておいて適当に優しい言葉だけかけておけばいいんだ。」という安易な発想に流されず、どうすればみんなが幸せに暮らすことができる世の中になるか、みんなで考えていきたいものですよね。

 

 

  

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